STAFF VOICE

小井口秀明さん

遠野店ではお客さまがお会計し、店をあとにする際、必ずこの言葉をかけます。これは、ただの決まり文句ではなく、心の奥深くまでこめたストーリーがあります。そのことを教えてくれたのは、「遠野食肉センター」遠野店の店長、小井口秀明さん。

 「お客さまのひとりひとりのことを、私たちはなかなか理解できないですよね」

 ゆっくり、噛みしめるような口調です。

 「もちろん、余裕のある方ばかりとは限らない。何か特別なこと、結婚記念日なのか、お子さんの誕生日なのか。どこから、何の理由で、どういうふうな想いを持って来てくださっているのか、分からない。だからこそ、ひとりひとり大事にしていかなきゃいけない、そう思うんです」

「どうぞ気をつけてお帰りください」

それを大きく感じたきっかけとなったのは、東日本大震災。

 「以前から、よく来てくださっていた顔見知りのご家族がいたんです。その奥さまが津波で流されて、亡くなってしまって……。それからも、娘さんとお父さんはよくいらしてくださるんです。『ここに来ると、おかあさんの生きてる時のことを思い出せるんだ』とおっしゃって」

 目をうるませ、言葉をつまらせながら続けます。

 「ジンギスカンって単純に食べておいしいだけじゃなくて、ひとつの鍋を囲んで、みんなで食べるという想い出とつながっていると思うんです。地元の方はもちろん、市外県外からも、わざわざ計画を立てて、スケジュール調整をして、ガソリン代や高速代を使って、お見えになっていただく。ひとりひとりのお客さまに対して、感謝とともに、感動して帰っていただきたい。おもてなしの精神で、最後まで送り出したい、という気持ちですね」


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